至誠通天

良い行いも悪い行いも、お天道様はご照覧

F君のデビュー戦

何週間か経ってから、一人二人と新入部員が入ってきました。
体験入部の形で一緒に練習しましたが、体力的に無理なのか殆どやめていきました。
残った一人が、後に主将になるF君でした。
とても運動神経がよく、何か個性がありました。
F君は高校時代に卓球をしていて卓球部に入ろうと隣の卓球場の練習を見に来たところを、ボクシング部の先輩に引っ張ってこられたらしいです。
それでも、まんざらボクシングが嫌いじゃなかったようで一緒に練習するようになりました。

5月に入ったら、ワン・ツーとワン・ツー・スリー・フォーの練習をやり出しました。
なかなかうまく打てませんでしたが、どうすればうまく打てるんだろう?
どうすれば早く打てるんだろうと考えながら練習していました。

ボクシングを始めて2ヵ月半で新人戦がありました。
当初は、まだ、早いと言う事で、先輩達は出場させないつもりだったらしいですが、
僕も、F君も出る気満々だったので、先輩達も折れました。
「危なくなったらすぐにタオルを投げる」という約束で出場出来る事になって、
二人とも嬉しくて嬉しくて大喜びでした。
試合が決まってからの練習は、とても厳しかったですが、
「試合に出て勝つ」という目標が出来たので頑張れました。

新人戦は規定があり、その規定をクリアしていれば大学何回生でも出場出来ました。
僕の相手は、3回生で見た目は怖そうな選手でしたが、僕は、試合に出れる嬉しさでそんな事どうでもよかったです。
会場は、今はもうありませんが大阪市阿倍野体育館でした。

F君はフライ級で、僕は一階級軽いライトフライ級でエントリーしました。
僕の出場するライトフライ級は、エントリーが少なく、1日目は試合がありませんでした。
でも、F君は初日から試合でした。
グロービングの時の彼は緊張してしているようでした。

ボクシングの試合は、生で観るのは初めてで、その迫力は想像以上でした。
パンチが当たる音が会場内に響き、血しぶきは飛び、汗も飛び散る。
凄い!これがボクシングの試合かと感動しました。

F君の出番。彼はどんな戦い方をするんだろうと自分の試合じゃないのに気にしていました。
カ~ンと、ゴングが鳴って試合が始まりました。
F君は最初から左ジャブで攻撃していました。けっしてうまい打ち方ではなかったけれど、よく当たって相手も度肝を抜かれた感じに見えました。
何しろF君の相手も3回生で、こんな1年坊主に打たれているんだから当たり前かもしれません。
相手もさすがに3回生で、応戦して来ましたが、F君が打った右ストレートが相手のあごにヒット。
相手は尻もちをつきダウン。場内大歓声!
これで終わるかなと思ったけれど、相手もさすがに3回生。
立ち上がってきて反撃にでてきました。

結果は、F君のポイント負けでした。