至誠通天

良い行いも悪い行いも、お天道様はご照覧

オフはプロのジムへ

東京から帰ってきて、何日かしたら練習がオフになりました。
後期の試験が始まる事と、地方から来ている部員が帰省する為です。

僕は、少しでも強くなりたかったので、プロのジムへ練習に行く事にしました。
大阪の京橋と言うところにある超名門のジムです。
ジム自体は狭かったのですが、活気をガンガン感じました。
よし!ここで練習しようとジムの門をたたきました。
中におられたのは、Nさんと言ってそれこそ超有名なトレーナー。
ちょっと前、浪速のジョーと呼ばれた元世界チャンピオンを練習生の頃から、
ずーっと公私ともに面倒を見てきたトレーナーです。
とても熱い方で、練習も厳しい。そして、礼儀にも、ものすごく厳しい方でした。
「歳は下でも、ジムに先に入門した方が先輩や。先輩の言う事はちゃんと聞け。」
僕はある程度、ロープも跳べるし、腹筋の練習も出来るので、少しなめた態度でした。
それを見つけたNトレーナーは、「礼儀を守れ」と僕をいきなりビンタ。びっくりしました。それから、僕ももう一度、一からやり直しました。

そのNトレーナーは、「アマチュアボクシングはボクシングやない。」と言って、
僕らのような学生ボクサーにはあまり教えてはもらえなかったのですが、
僕は何とか食らいついて、トレーナーが他の選手にアドバイスしている事を聞いたり、
質問も直接したりしました。その時はきちんと教えて下さいましたが、やっぱり教え方は厳し勝ったです。

その当時、そのジムには日本ランカーの選手が何人かおられました。
その中の一人、ライトフライ級(当時はJ・フライ級と呼んでいました)のK選手のスパーリングパートナーとして抜擢されました。
そのきっかけとなったのは、毎朝の大阪城へのロードワークの際に、偶然会った事からでした。
「Kさんおはようございます。」と、挨拶するとKさんも挨拶して下さいました。
「君は、いつも走ってんのんか?」と聞かれたので「ハイ、毎朝走っています。」と答えました。
大阪城は広いので、後にも先にもKさんと会ったのはこの一回だけでした。
でも、この一回が大きなきっかけになったのです。
その日の練習でKさんがNトレーナーに「この子、朝、走ってますよ」と言って下さいました。
それからNトレーナが、僕に本気で練習を教えて下さるようになったのです。
”至誠通天”(しじょうてんにつうず=良い行いも、悪い行いも、お天道さんはみんなご照覧や。だから、いい行いをしていたら良い事が、悪い行いをしたら悪い事が起こるという意味)僕の座右の銘ですが、その時、本当やなと思いました。
たった一回のきっかけで、こんなに嬉しい事はありませんでした。
毎日、走っていてよかったなと、練習は厳しくなってきたけれど、これで強くなれると心から思いました。