至誠通天

良い行いも悪い行いも、お天道様はご照覧

休学して初めての正月

母方の実家は、大きくて毎年正月には親戚中が集まります。
中でも母の兄、僕からしたら伯父さんですが、伯父さんは僕を特に可愛がってくれました。
大学が同じで、僕が合格して連絡した時は、ものすごく喜んでくれました。
大学へ提出する書類を持って行って「僕の保証人になって下さい。」と、お願いに行った時、「よっしゃ、よっしゃ。」と、二つ返事で署名してくれました。
「おまえも飲め!」と、酒を勧められましたが、周りにいた伯母さんやいとこの姉ちゃんに止められました。
それでも、とても上機嫌でした。「おまえも俺の後輩や。しっかり勉強しいや。」と激励してもらい、ちょっとはずかしいような嬉しいような、そんな気持ちになりました。

そして、休学中の正月も伯父さんの家に集まりました。
毎年のように新年会は盛り上がり、楽しかったのですが、おやじがみんなの前で、
「こいつ(僕の事)、今、休学してんねん。俺がこいつが新聞配達して稼いできた学費を会社に回してしもうたから、学費が払えんようになってしもたんや。俺、こいつが可哀そうでな。」と、泣きながら言いました。
おいおい、ちょっと待てよ。そんなん言わなくてもいいやろ。
伯父さんは、「本当か?!」と、僕に聞いてきたので「本当です。」と答えました。
「何で早く俺に言って来なかったんや。そんなもの、俺が払ってやるから学校は続けろ。俺はおまえの保証人や。直ぐに払うから早く復学しろ。」
「僕は自分で学費払えなくなったのでもう学校へは行きません。」
「もう一回、しっかり考えて返事しに来い。」

と言って、伯父さんは部屋を出ていきました。
その後、親戚の人達に学校は辞めたらあかんと、散々言われましたが、僕はその時には、辞める覚悟でいました。
「おっちゃんが、学費出したるって言うてるねんから、甘えて続けて行き。」
伯母さんにいわれましたが、おやじの顔がつぶれると思ってそれだけはしたくないと考えていました。

おやじもおふくろも親戚中から叩かれて可哀そうに思いました。
でもなぜおやじは言ったんだろう?
別に言わなかったら分からないのにと、思ったけれど、おやじも正直な人間だから黙っているわけにはいかなかったんだろうな。
それも今になって分かった事。その時はそんなこと全く考えませんでした。

しかし、僕はこれからどうしよう、どうしたらええねんと考えていました。
ボクシングは続けたいから、プロのジムへは通う。
問題は学校だ。伯父さんの前で辞めると言ってしまっているから、もう辞めようかという気持ちと、やっぱり学校は卒業したいと言う気持ちの比率は6:3で、辞める気でいたけれどやっぱり行きたい・・・。やっぱり行けない。いや行きたい・・・。
気持ちは揺れ動いていました。どうすればいいんや。

他にも、大学に行って卒業して何になる。

大学を辞めて何か手に職をつける方がいいのではないかとか。
伯父さんに学費を借りて、卒業して就職してから少しずつ返す。

いや、それではおやじの立場がなくなる、とか。
毎日毎日そんな事が頭の中をグルグル回っていました。

一つの答えに行きつきました。それは・・・・・。