至誠通天

良い行いも悪い行いも、お天道様はご照覧

建築設計会社の皆さん、本当にお世話になり有難うございました。

Ⅱ部に移って、大学に入って初めて勉強をする気になりました。
それでも、自動車の運転免許だけはとっておきたかったので、もう一度新聞配達をやり出しました。
だから、朝は新聞配達、昼は建築設計会社で測量、夕方ボクシング、夜学校という、超過密なスケジュールを1年半続けました。
今思えば、よく身体が続いたなと自分でもびっくりしています。
それでも、何ぼ何でもこれ以上は身体がついて行かないと思い、建築設計の会社には勉強したいからという理由で退社しました。
その建築設計の会社では、社会的な色々な勉強をさせてもらいました。
測量部の部長さんにはとても可愛がってもらいました。
ある1月の事です。今はそうではありませんが、当時1月15日が成人の日でした。
祝日でしたが、忙しくてバイトに行っていました。
僕以外の殆どの同級生は、成人式に出席していたようです。
僕は欠席しました。別に成人式には行きたくなかったし、着ていくスーツが買えなかったからバイトしてる方がいいわ。
と、思っていましたが、本当はちょっと寂しいなと思っていました。
測量現場の帰りの自動車の中で、部長さんに
「おまえ今日は成人式じゃなかったか?なんで成人式に行かなかったんや。」
と、聞いてこられたので
「スーツ無いし、バイトしてる方がいいです。」と答えました。
そしたら部長さんが
「よしっ!今晩、俺がお前の成人式やったる。」と言って帰りに社員の人何人かと居酒屋へ連れて行って下さいました。
それまでは、カッコだけで飲んでいた酒でしたが、その時の酒はなにか全然違う旨さを感じました。
辛い事があっても、一生懸命やっていれば、きっとお天道さんは見て下さっている。
まさに「至誠通天」です。

送別会は、10人ぐらいの社員の方がやって下さいました。
なかに、僕をいじめたおしてきた方もいました。
実は、その方が発起人だったんです。
「ここで辛抱してこれたんやから、次の仕事先でも頑張りや。」
と、言って下さいました。あまり酒が強くないその方がグデングデンに酔っ払っていました。
そして僕に
「おまえみたいな奴の為に、みんな集まってくれたんやぞ。みんなさびしいねんぞ。幸せや思えよ。次も頑張れよ。」
といって泣いておられました。その方は、僕の事が可愛かったのです。可愛さ余って・・・。そんな事も分からず、よくケンカもしたけれど、後はいつも笑顔だったなぁ。
僕って何て幸せな人間なんやろう。僕もちょっとうるっときました。
酔いつぶれたその方を他の方が、二人がかりで引っ張っていかれました。
その時の酒も旨かったです。

建築設計会社の皆さん、本当にお世話になり有難うございました。

建築設計の会社をやめて、運転免許をとって、果物屋さんの配達のバイトに行きはじめました。