至誠通天

良い行いも悪い行いも、お天道様はご照覧

減量より辛い増量

初めてのリーグ戦は、フライ級で出場しました。2回生の秋でした。
部員不足で、メンバーが足りないので僕もかり出されたのです。
試合会場に到着して、各個人で予備計量します。
減量の厳しい選手で、リミットオーバーしている選手は、ロープを跳んだり、ヤッケを被ってシャドーボクシングをして汗をかいていました。
僕はその反対で、アンダーリミットを割っているので体重を増やさなくてはいけません。
先輩が、僕がアンダーリミットを割っているのをみて
「こっち来い。計量の15分前になったらトイレに隠れて水飲め。それからトイレはそれまで我慢しろ。」
水を飲めと言われても、当時は今のようにペットボトルに入った水や、スポーツドリンクはありません。
前日に持って来いと言われていた水筒に水道水を入れて飲みました。水道水と言えど生水を飲んでいいのかなと思いながらも、計量をパスする為に飲みました。
なぜ、他校の選手に見られたらいけないかと言うと、体重が軽いと言う事でパワーが劣っているとみられ、なめられると言う事でした。
僕は、パワーでは負けない自信がありましたが、先輩にそういわれたので言われた通りにトイレで水を飲みました。
当然、オシッコに行きたくなります。でも、計量が終わるまでは絶対に我慢しないと体重が減ってしまいます。
それに、胃袋の用量にも限界があるので、飲んだ水が口からも出そうになりましたが、それも我慢。

2部校の計量は、1部校の後なので計量まで時間がかかります。
オシッコに行きたい、行きたいと、もじもじしはじめましたが、何とか秤にのることが出来ました。
体重は、48.2Kg。計量パス。直ぐにトイレに行ってオシッコをしました。そして、口からも出しました。
こんな目までして体重を確保しなくてはいけない事に、改めてボクシングの厳しさを感じました。
世間一般の方々は、ボクシング=減量のイメージが多いと思いますが、僕みたいなボクサーもいる事を知っておいてほしいです。
計量後の食事は、みんなで食べに行きましたが、僕は水を飲み過ぎたせいもあって、胃の調子が悪くなっていて、食べたくなかったのですが、ちょっとでも栄養を付けようと押し込みました。

試合の相手は、M大学。そして、僕の相手選手は1回生の選手でした。
いつもの試合前の緊張、恐怖感はそれほど感じませんでした。
相手が格下だとなめてかかっていたからだろうと思います。
試合は7人制。最初はフライ級2試合で、先行はF君で、2試合目が僕でした。
F君は、この試合ぐらいから持ち前の運動神経の良さが発揮されて来て、相手のパンチをかわし、相手の懐に入ってショートで攻める。
そんな戦い方の基本が出来てきた試合で、RSC勝ち。
そして、次が僕の試合です。
僕は、こんな奴に負けるわけがないと、なめていたので、いつもの前へ前へのボクシングをしませんでした。
知らず知らずのうちに受け止めるボクシングをしていました。
ガードをして、パンチはブロックしていたのでクリーンヒットは受けていなかったのですが、ジャッジは攻勢面も見ます。
1ラウンド目は多分相手選手のポイントが上だったでしよう。
でも、自分の中には次で決めれると言う、自信あったので、全然気にしていませんでした。でも、それは増上慢でした。
2ラウンド目は、いつもの前へ前へボクシングで相手を追い詰めて連打。
相手はガクッと膝から崩れそうになるのを必死でこらえていたのが分かりました。
経験が浅い相手選手は、クリンチで逃げようとしますが僕はおかまいなしに打ちました。
そこで、ボクシングを始めて、ローダッキング(相手のベルトラインより頭を下げる事)で注意を受けました。
頭なんか下げてないよ。なんでこれが反則やねん。と、思いつつ攻めましたが、なんか攻撃がチグハグになって行きました。