至誠通天

良い行いも悪い行いも、お天道様はご照覧

まさかの連敗

アマチュアボクシングでは、どんな反則であろうと、注意3回でファウル1回、次、注意されるとファウル2回となり、その次注意されるとファウル3回となって反則負けになります。
僕が注意されて直ぐに相手も注意されました。すると今度は、僕も相手も双方注意を受けました。注意の内容は、双方ともヘッティングでした。
自分が反則を取られる事に納得いかないまま、2ラウンドが終了しました。
コーナーに帰って来た時に、セコンドの先輩から、次のラウンドは、少し離れろと言われました。
ローダッキングやヘッティングを避ける為だと思いましたが
「僕、ローダッキングしてましたか?」と、先輩に聞くと「レフリーに注意されたらローダッキングや」と言われました。
おかしいと思いながら3ラウンド目が始まりました。
相手は、最終ラウンドは攻めるつもりだったのか、ガンガンでてきました。
僕も受けて立ってやると、攻めかけた時、またもや注意。これでファウル1回で減点1点。
「おいおい、ちょっと待てよ。おかしいよ」と思いましたが、注意は覆りません。
「ボックス」のレフリーに声で試合再開。相手は出てきます。パンチを出さずに肩や身体をぶつけてくる典型的な素人ボクシング。
あまりひつこい(しつこい)ので、腕を伸ばして相手を突き放しました。
すると今度は、プッシングの反則でファウル2回目で減点2点。
あと1回注意を受けたら反則負けになるので、もうこうなったら先輩の言う通り離れるしかない。
離れて攻めるなんて、僕には出来ない。おかしい、おかしいと思っているうちに試合終了。
ジャッジペーパーが集められて判定。
結果は、僕の負け。
相手は、大喜びではしゃぎまわっていました。
その時の僕は、頭の中が真っ白。
リングから降りてきてもおかしいとしか思えなかった。
あとのバンタム級2試合のうち1試合、フェザー級の試合1試合、ライト級棄権で4敗。
我校とM大学の対戦結果は、M大学の勝利に終わりました。
試合後の挨拶で、僕の対戦相手が来たとき、
「勝てるとは思わなかったわ。」と、学校は違えども先輩に向かって敬語でしゃべれよと腹がったが、勝てば官軍。
今日の試合は、僕の増上慢が原因の敗戦でした。

その日の試合が全部終了してから、セコンドをして下さったOBの方から聞かれました。
「今日の試合は、負けたと思ったか?」と。
僕は「反則は納得できないけれど、負けたと思いました。」
と、答えました。するとそのOBの方は、あれは勝ってたなとおっしゃいました。
その表情から、単に僕を慰める為におっしゃったのではなく、その方は本当におかしいと思っておっしゃったのだと取れました。
それと、「ローダッキングのとり方は、俺も納得いかないけれど試合は試合や。これを経験にしろ。」とおっしゃいました。
その日の帰りは、試合に負けた悔しさではなく、放心状態で地下鉄に乗っていました。