至誠通天

良い行いも悪い行いも、お天道様はご照覧

パンチ力抜群!サウスポーKR君

二人目はサウスポーKR君。空手をやっていたので闘争的なセンスはあった。パンチ力が強く一発一発の威力は、フライ級では並はずれていた。ミットを持っていても時々弾き飛ばされるぐらいの威力がある。しかし、練習嫌い。特に走るのが嫌いでスタミナが無い。自分は強いと思っているので、誰の言う事もあまり聞こうとはしない。無理やりジムワークの途中でロードワークに引っ張りだしても「しんどいからやめましよう」と、平気で言うくらいの選手だった。

それでもそんな彼が僕の言う事を聞き事になったのは、スパーリングの時、相手の選手に僕が作戦を授け、KR君が撃ち込まれてからの事でした。その時授けた作戦と言うのは、ボディブローでした。相手選手に「あいつは直線にしか動けない。だからあいつが出てきたら、左へ回ってボディーを打て。引っ付いてもボディを打て。とにかくボディを打て。」と、言って聞かせました。そこそこ出来る選手だったので、言う通りに動いてくれました。結果は僕の予想通りスタミナ切れでボコボコ打たれました。

その後悔しかったのでしよう。僕のところへきて聞いてきました。

「こんな苦しいスパーリングは初めてでした。何であんなに打たれたか分からない。」

と。僕は

「君の攻め方はワンパターンや。直線には強いかもしれないけれど、横の動きついていけない。アップライトに構えているからボディにスキがありガードが甘い。根本的にスタミナが無いからボディを打たれると余計にスタミナが切れて苦しくなる。」と、言いました。KR君は納得したようで、それ以降、僕の言う事は聞くようになりました。

と言っても、相変わらず走るのが嫌いで「走る以外の苦しい練習は何でもするから、走るのだけは嫌や」と、僕や会長に直接言ってくるぐらいわがままな選手でしたが、最後は、走るようになりました。

マンツーマンで教えていると、KR君のいいところがどんどん見えてきました。ちょっとウィービングを教えると今までアップライトに構えていたスタイルが柔らかくなり、上下の動きも出来るようになりました。フックは打っていましたが力任せに打っていたので、打った後相手に外された時のバランスが滅茶苦茶悪い。そこで、横のフットワークを教えました。すると、教えはしなかったボディブローを打ち出し、それが当たるようになって来ました。当たると、もともとパンチ力があるので、スパーリングの時の相手はかなり苦しそうでした。これは使えるなと思いました。

後はスタミナです。走るようにはなったものの、やはりだらだら走っているのでスタミナが付かない。どうすればいいか考えました。そしてロープでダッシュさせることで少しでも苦しい練習をさせました。それで少しは踏ん張れるようになった気がしました。